石牟礼道子

わが洞のくらき虚空をかそかなるひかりとなりて舞ふ雪の花 狂へばかの祖母の如くに縁先よりけり落さるるならむかわれも 雪の辻ふけてぼうぼうともりくる老婆とわれといれかはるなり ひとりごと数なき紙にいひあまりまたとぢるらむ白き手帖を この秋にいよよ死ぬべしと思ふとき十九の命いとしくてならぬ おどおどと物いはぬ人達が目を離さぬ自殺未遂のわたしを囲んで ばばさまと呼べばけげんの面ざしを寄せ来たまへり雪の中より